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投稿日:2021/08/06

鉄道模型のススメ – 脱線に関する考察編

いきなりだが、鉄道模型にとって重要な要素とはなんだろうか。
これは人によって本当に沢山の要素があるだろう。デザインやリアリティ、製品ラインナップの豊富さ、「編成カスタマイズ編」でも少し触れたカスタマイズ、情景表現等、挙げればキリがないしこだわりポイントは1人1人異なるはずだ。
そのような前提は承知しつつ、おそらく大抵のNゲージャーが絶対に見逃せないところ、それは「車両がきちんと走行すること」である。「そんなの当然のことだろう?」「基本中の基本を何を今更」という意見は実にごもっとも。
例えば、車両もレールも新品状態で、ごくごく普通にレールを敷設し、接続も配線も全く不具合は見当たらず、無論走り出しは問題なく滑らか。しかし、まともに周回できないケースが存在するのは残念ながら事実なのだ。
本稿では筆者の悩みの種でもあるその代表格、「脱線」について取り上げたいと思う。
なお、毎度のことではあるが、あくまでも筆者の経験に基づくものである。断定的な表現をしている箇所もあるが、限定された条件であることを留意していただきたい。そもそも数千両にも及ぶ車両製品や数えきれない種類のレール関連製品を持ち合わせてはいない。

1. 旧製品と昨今の製品について

最初に結論っぽいことを述べると、極論的ではあるが「編成カスタマイズ編」でも触れた昨今の事情に起因しているという点では、脱線問題も同じと考えて良いと思う。
順序立てて考察してみることにすると、バカバカしいおさらいではあるが、そもそも脱線とは何らかの原因で車輪がレール上から外れてしまう現象だ。
ここで、話をシンプルにするために、次のことは原因から除外する。いずれも原因が明らかで対処も簡単(自然災害等の外乱は論外)だからだ。

  • レール接続の不具合(ジョイントが正常に繋がっていない) -> レールをきちんと接続
  • 自然災害等の外乱 -> 不可抗力
  • 明らかなオーバースピード走行 -> 速度落とせ!
  • ユーザのオペレーションミスによる衝突 -> 練習の積み重ね
  • 魔改造車両の走行 -> 自己責任
  • その他の走行妨害行為 -> マナー遵守や不注意を起こさない対策

とすると、接点たる台車とレールの間に「予期しがたい不具合」が起こって脱線を引き起こしているということになる。
筆者の記憶を遡ると、そもそも旧製品時代(30年以上前)に走行させていた頃は脱線自体起きたことがなかったように思う。まあ手持ちのコレクション自体が少なかったこともあるが、割とジグザグした良いとはいえない線形にポイントも入れ、慣らし運転と称してパワーパック上限まで回したフルスピードで車両を通過させることも日常茶飯事(良い子は真似しないように的な行為)だった。動力車は悲鳴に近いモーター音を発しながら、それでも普通に走ってくれたものだ。
現在は手持ちの車両コレクションが増えて、近年発売されたモデルも所有している。レール製品も刷新されており、現在はTOMIXファイントラックを主に使用している。
そして、脱線が起こるのはファイントラックで敷設した全く同じ線形でも、近年発売された新製品の方であり、旧製品は問題なく走行する。無論、前述のようなフルスピード運転などしていない。
さらに、ファイントラック発売前の旧レールを用いた場合はポイント通過時の脱線確率が上がる。これは設計自体がかなり変化していることが大きいと思われる。
新旧組み合わせの相性もあるだろうが、どうも一部の新製品の台車周りの造りに原因があるようだ。(あくまで一部であってケースはかなり限定される。)

2. 台車周りの変化

新製品に着目すると「編成カスタマイズ編」で触れたカプラー事情と同じく、台車周りもよりリアリティを求める方向へとモデルチェンジしている。旧製品と比較観察してみると以下のような特徴がある。

  • 全体的に車輪のフォルムがスリムになっている。特に車輪幅が縮小している。
  • 一部の製品に実車同様、振り子(車体傾斜)機能が搭載されている。Nゲージではこれを台車と接点を持つ集電板の曲げ加工により実現している。
  • 車輪のフランジ(車輪内側についている出っ張り部分)とレール接点部分との結合断面が滑らかになっている。つまり、機能的にはローフランジ(出っ張りが小さい)化している。
  • 黒塗り車輪が主流(元々は銀色)となっている。

実車では特にカーブにおいて前述のような構造が走行に関して有利(高速通過や摩擦減少等)にはたらく。それは車両重量、カーブ半径、速度と遠心力、線形等を踏まえて当然ながらしっかりした機械力学に基づいて設計されているからである。ところが、Nゲージでは見た目上の効果しかない。それはボディ部分との重量バランスがかなり関係している。
ややおさらいになるが、Nゲージの場合は機関車重連や一部の長編成・併結再現等の例外を除き、原則として1両の動力車と任意両数のトレーラ車(動力を持たない車両)で編成される。動力車の負担を考えれば、当然トレーラ車は軽量でレール上での転がり抵抗が少ない方が望ましい。特に上り勾配のあるレイアウトではその影響が顕著になる。実際、トレーラ車のボディは軽く造られている。ボディ内部の床下部分に低重心化のための金属板ウェイトは入っているが、全体を重くする目的ではない(たぶん)。
しかし、ボディが軽いということは車輪のレールへのトラクションもかかりにくいということだ。そうすると「脱線のしにくさ」という観点からすれば、前述の特徴が全て(色部分は除く)裏目に出る。スリムでローフランジの車輪にフワフワのボディが乗っているのだからちょっとしたレール面の変化にはじかれてしまうのだ。特に振り子はさらにシビアで集電版の曲げ加工が台車の適切な動きを阻害したり、アーノルドでないカプラーはそもそもねじれに弱いのでS字のような線形では前後車両の挙動影響を受けたりする。そのため車輪がしっかりレールを捉えることができずに浮いたりしてしまい、脱線につながる。(そもそもNゲージにおいて遠心力など問題にならない。)
原因究明のために実験してみたことがあるが、必ず脱線するポイントを走行中の対象車両に対し軽く指で上から押さえるだけで脱線しない。疑似的にトラクションを少しかけてやるだけであっけなく通過するのだ。

3. 脱線を防ぐためには

非常に残念なことではあるが、冒頭に述べたようにこの問題は筆者の悩みの種でもあり、統一的な解決策は見出せていない。同じ製品でも個体差があるようで、そもそもサイトに症状の参考記事すらなかったり、あっても同一の対処方法でうまくいくとは限らなかったりするのだ。だましだまし試行錯誤していくしかないというのが現状だ。
以下に実際に試してみてうまくいった例をいくつか掲載するので、もし脱線問題にひっかかったら参考にしてみてほしい。

3-1. レイアウトの変更

経験上、ほとんどの脱線は分岐元からのポイント通過、急カーブのS字走行、勾配角度の急激な変化のいずれかで発生する。よって対象レイアウトを変更するという方法である。もちろんレイアウトによって可能不可能はあるだろうが、可能なら試してみる価値はあると思われる。

  • あきらめてポイント自体を外すか、別の場所に移す。
  • 別のポイントに交換する。
  • 脱線する車両のポイント通過を逆方向にし、原則的に分岐先から合流する方向で走行させる。ヤード(引き込み線)等への留置でどうしても逆方向に走行しなければいけないケースの場合は超スローで運転する。
  • 急カーブのS字は廃止し、間にストレートが入るようにする等線形を組みなおす。
  • 勾配をなくす、緩やかにする、段階的に勾配角度を変化させる。

3-2. 台車の変更

編成のうち全てがダメということはどちらかといえば少なく、脱線しやすい台車は大抵決まっているので、そこにテコ入れするという方法である。これも可能不可能はケースバイケースかと思われる。

  • 対象台車を同一編成の別の台車と入れ替えてみる。向きも逆にする。
  • 対象台車自体を破棄し、台車パーツだけ新規購入して交換する。
  • 形式的にほぼ似た形状の別編成の台車と交換する。(若干の見た目の変化には目をつむる)

3-3. 速度の変更

オーバースピードまでいかなくとも、スケールスピードを上げると脱線確率は上がる。よって、少し抑えめのスピードで走行するようにする。こちらは方法としてはもっとも簡単だが、楽しみがなくなってしまうかもしれない。

(追記)
続編を載せてみました。