バーチャルオフィスのススメ – Gatherの使用所感
【ドット絵RPG風リモートワークツール「Gather」を導入してみた】の続編的な位置付けで、実際の使用所感について徒然と書いていきたいと思う。
前置きとして述べておくが、本ツールに限らず一定のシェアを獲得したアプリケーションというのは一般的に評価が別れるものだ。ユーザにはそれぞれの主観が存在し、何が評価ポイントの主たるものになっているのかはバラバラなので、まあ当然である。ソフトにしろハードにしろ競合製品をめぐってはよく過激な論争が起きたりしているが、筆者にとっては一切興味はない。様々なラインナップから「良い」と思われるものをチョイスすれば済むだけだと思う。この記事も筆者の主観で書いているので参考程度に読み進めていただければ幸いである。
まだまだ応用的な使い方はできていないのと、アプリケーション自体も今後はバージョンアップを続けていくはずなので引き続き追随し、新たな発見については改めて別記事として紹介していきたいと思う。
1. UI
2Dマップに各ユーザのアバターがいるというシンプルなデザインなので、とにかく操作が直観的で使い勝手が良い。昨今のリアリティ重視の風潮から見れば逆行していることになるが、コミュニケーションツールとしてはこれで十分に思える。凝ったセッティングをしたければ調べたり試行錯誤が必要ではあるが、基本動作に関しては使用を開始したその日からすぐに使いこなせる。
※なお、筆者はRPGというジャンルが浸透し始めた時期(約40年くらい前)から、現役のMMOに至るまでメジャータイトルのプレイ経験があるので、RPG風味のUIに関する特徴の変遷は理解しているつもりである。
導入自体も手間がかからないのが特徴だ。目的に応じてマップのテンプレートが用意されており、即座にバーチャルオフィス空間を創作できる。「gather 導入」のような検索キーワードで導入方法の紹介記事も簡単に見つけられる。実際、立ち上げ決定~バーチャルオフィス生成~社内アナウンスまでに30分もかかっていない。ベースはWebアプリケーションなので、クライアント側にも特別な準備は必要ない。
2. 機能
一般のWeb会議用アプリケーションが有する機能は一通り包含していると思う。非常によくできている。
- アバター
バーチャルオフィスなので、初回ログイン時にアバターを作成し、自キャラを動かしてアクションを起こすというのが基本操作となる。他キャラとのコミュニケーションが主体となるわけだが、頭上の吹き出しの形で合図を出す、クラッカーを鳴らす模擬、踊る等、ライトなアクションができる程度の遊び心のあるところが嬉しい仕様だ。カメラのリアル画像がなくともアバターそのものが存在感を示してくれる。
オフィスの大きさにもよるが、2Dなので全体を見渡しやすく誰がどこにいるかが分かりやすい。また、キャラ同士が何か話をしているときはそのアバターの頭上に会話の吹き出し(内容は含まない)が出るので「何か話してるな」という様相を確認することができる。オフィスに誰がいるかはマップ脇にリスト表示できるので、特定の相手がどこにいるかをナビゲーションしてくれたり、RPGによくある機能のように相手をロックして追跡することもできる。 - 音声コミュニケーション
アバター同志の距離が近づき、会話が可能な環境(後述のエリアに依存)になると自動的に他キャラの中の人(のカメラ)がタイル形式でポップアップされ、ビデオ通話が可能になる。特定の相手とヒソヒソ話で密談する(他キャラにはほぼきこえない)なんてこともできてしまう。
他のアプリを使って仕事をしている時等、非アクティブ状態になった場合は自動的にミュートとなる。Gatherをアクティブ状態にすれば解除される。また、非アクティブ状態になっているキャラに対して呼び鈴を鳴らして呼び出すことも可能だ。集中作業やリアル空間での離席等で、一時的に音声コミュニケーションを遮断したい場合はステータスを「Do Not Disturb Mode」に変更すると、頭上に赤いアイコンが出て周囲に示すことができる。 - チャット
通常のWeb会議用アプリケーション同様に、バーチャルオフィスにいるメンバーとは自由にチャットができる。全員宛や相手指定のメッセージを送信できるのはもちろん、バーチャルオフィスならではの機能として近くにいるキャラにだけメッセージが届くチャットも可能である。 - エリア
マップ内は大雑把に分けるとオープンエリアとプライベートエリアで構成されている。オープンエリアは広場のようなイメージで特に壁が設けられていないような空間だ。一方、プライベートエリアは会議室や個人の執務スペースのようなイメージで、同一のプライベートエリアにいるキャラ同士なら声が届くがエリア外には届かない。もちろん現実とは異なるが、どのエリアにどのキャラがいるかでオフィス内の稼働概要が掴める。 - カスタマイズ
マップテンプレート自体のラインナップがかなり充実しているので、ベーシック状態でもすぐに使える。もちろん、自由にカスタマイズもできるし、新規でマップ生成を行うことも可能である。既存マップに増築するようなイメージで別マップを生成し、行き来するということもできる。隠しダンジョンのようなものを設けることもでき、良い意味で遊び心を感じる。
カスタマイズツールは内臓されており、ヘルプもついているので簡単にカスタマイズを行うことができる。また、通常のオフィスにある机、椅子、PCやディスプレイはもちろん、給湯室や書斎を表現できるような数多くのオブジェクトが用意されており、マップのあちこちに配置することが可能だ。オブジェクトは見た目だけのものだけでなく、例えばホワイトボードのような機能付きのものもある。機能がついているオブジェクトはターゲットアクション(近づくと自然にガイドメッセージがポップアップ表示される)を取ることで操作ができる。複数人が同じホワイトボードにこのアクションを行えばもちろん内容は共有表示される。また、ちょっとした応用でYoutubeのURLをオブジェクトに埋め込んで共用BGMにしたりするなんてことも可能である。他にもいろいろできることがあるはずなので、今後も調べていきたい。 - ミニゲーム
これはGatherならではのスタンスだと思うが、かなり多くのミニゲーム要素が搭載されている。対戦型の謎解きのようなものから、アバターをカートに載せてレースする等とにかくジャンルが豊富だ。導入当初、オフィス用のテンプレートマップにカートレース場までついているのには驚いた。バーチャルオフィスながらレクリエーションツールとしても使えるのだ。
3. パフォーマンス
とにかく軽いの一言につきる。高価なグラフィックボードや特殊な入出力インターフェース等、過剰なハードウェアスペックを要求されることもないし、動作のカクツキやストレスになるリードタイムもない。2DのシンプルなデザインをベースにしたUIの恩恵を受けていると言えるだろう。
もちろん、オンラインである以上回線状況の影響は受けるが、それは他のコミュニケーションツールであっても全く同じことだ。
4. コスト
言うまでもなく、組織にとって何らかのシステムを導入する上で最も障壁となりえるのはコストである。嬉しいことにGatherはこのハードルも低く、25人までなら特に期限もなくフリープラン(無料)で使用できるという大盤振る舞いだ。
フリープランでも前述のように十分な機能が備わっており、何か不都合を感じるような制限事項は全く見当たらない。弊社のように小規模な組織であれば実質導入コストがゼロなのは嬉しい限りである。
※なお、Gather自体は、これからもアップデートしていくであろう新しいサービスなのであくまで本記事の執筆時点のものであることを付け加えておく。今後の料金体系に変更が入る可能性は十分にある。
5. まとめ
リモートワーク中心だが、Web会議システムではイマイチ・・・もっとコミュニケーションを活性化したい、メンバーが気軽に集まれる「場」がほしい。
Gatherはそんな期待に応えてくれる十分有効なツールであると筆者は感じている。とりあえずバーチャルオフィスがどんなものか体験してみたいということであれば、試用導入してみてはいかがだろうか。