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投稿日:2021/07/31

鉄道模型のススメ – 編成カスタマイズ編

 今更ではあるが鉄道模型の魅力の一つとして、自由度の高さがある。
 「初心者向け導入編」でも触れているが、鉄道模型は規格が決まっており基本的に製品群はそれに準拠しているので互換性に優れていると言える。
 導入編ではTOMIXとKATOでレール接続に互換性がないことを述べたが、これはあくまで初心者向け推奨としての話である。他社製レール接続用の特殊レールを使えば簡単に相互接続は可能だ。
 また、自己責任にはなるが、製品をベースとしたカスタマイズ(改造)は無限のオリジナリティに溢れており、鉄道模型趣味の醍醐味の1つでもある。
 それら全てを網羅することは到底できないので、本稿ではそれほどハードルの高くない車両編成のカスタマイズに着目してみたいと思う。なお、わざわざカスタマイズしなくても各メーカーから車両はセット販売されているので、それに従えば編成は綺麗に仕上がるようになっていることを一応前置きとしておく。

1. 昨今の連結器(カプラー)事情について

 基本事項として、連結器(以降、カプラーと記載。鉄道模型の世界では必須用語。)の話に触れておく。当たり前の話ではあるが、実車であろうが模型であろうが車両と車両を連結させるにはカプラーが必要だ(特殊例として連接台車を用いるものもあるが、採用例は少ない。)。別の言い方をすれば、模型の場合はこのカプラー形状が合致すれば、どんな車両同士でも物理的には連結可能である。
 かつてのNゲージはアーノルドカプラーという連結器形状を装着した車両が海外も含めて業界標準になっており、メーカーや車両形式の違いに依存しない編成を組むことが可能だった。そのため、実車の運用ではない仮想編成やイレギュラーな特殊回送を模擬することも容易にできた。つまり「一昔前なら」大したネタにもならない話だということだ。
 筆者個人は現在もこのアーノルドカプラーが気に入っている。業界標準に採用されるだけあって非常に機能性に優れているからだ。

  • 形状の特徴から連結と切り離しが非常にやりやすい。
  • 表現が難しいが、車両間をがっちり結合するのではなく適度に軽い結合で連結させる。上下左右方向への可動域も広い。
  • レール上を滑走させて他の車両に軽く当てるだけで連結が完了する。つまり、手ばなしでの連結が可能である。
  • 切り離しを上方向、つまり車両を持ち上げるだけで行うことができる。
  • 走行中に勝手に切り離しが起きてしまう現象がごく稀に起こるが、大抵は連結時の不具合(つまりユーザ側の問題)に起因する。
  • 「軽い結合」の表現の通り連結時は適度な「あそび」があるために、カプラー間の若干の高さのずれや、走行中の振動や線形に伴う車両間の挙動のずれを許容する。そのため、筆者の経験上、このカプラーに起因する脱線が起こったことは皆無である。

 ところが、書き方から察していただいていると思うが、昨今の日本のメーカーはアーノルドカプラーではなくメーカー独自仕様のカプラーを標準装備するようになってきている。理由は至ってシンプルで、アーノルドカプラーは見た目のリアリティに欠けるという面があるからだ。


アーノルドカプラー装着のTOMIX製キハ183系

 模型である以上、自然な発展形としてメーカーは新製品を出す度にディティールにこだわるようになっているし、ユーザ側もデザイン性を重視する人は当然ながら大多数である。それはカプラーに関しても例外ではない。現在主流のカプラーは実車さながらのデザインであり、連結時も「がっちり結合」する。最近Nゲージャーデビューした諸氏にはアーノルドカプラーなど知らないという方も多いと思う。
 しかし、その代償として前述のアーノルドカプラーの優れた機能性はなくなり、互換性も失われた。ここは論争になると思うが、実際にNゲージを扱っている身としてアーノルドカプラーを超える機能性をもったカプラーは未だに皆無である。そもそもの設計思想が機能重視からデザイン重視に移行しているので当然の結果とも言える。
 そのため、同一メーカー内ですらも複数種類のカプラーが存在する(同一車両形式でも新製品ではカプラー仕様が変更されている等)ことになり、どれとどれなら互換性があるか等は都度調べたり実験してみたりしないと分からなくなってしまったのだ。現状では他社の同一車両形式を連結するということすら自由度は低くなってきている。

2. 自由度の高い編成について

 ここまでの書き方だと、「じゃあカスタマイズとか無理じゃん。おとなしくメーカー提供の車両セットに従って編成組んどけってことだよね?」となる流れだが、例外がある。それは機関車と客車もしくは貨車の編成だ。
 観光列車や臨時のイベント列車を除き、国内実運用では定期運行がなくなってしまった客車列車だが、鉄道模型の世界では人気絶頂の商品だ。北斗星等のメジャーな寝台特急もそうだが、あまり知名度の高くない急行編成等は特に人気がある。
 ここでカプラーの話を織り込むと、各メーカーとも機関車、貨車、客車(メーカーによっては電源車や緩急車の車掌室側のみ)は現行製品もアーノルドカプラーが標準装備されている。つまり、機関車、貨車、客車で組成される編成は自由度が高いということだ。中古市場では単品で販売されていることも多く、短編成から長編成、異なる車両形式の併結、外国客車もしくは機関車との組み合わせ等が可能であり、筆者も10系寝台車と12系座席車を組み合わせてかつての夜行急行編成(実運用編成とは少し異なるが)を再現している。
 車両の好みは人によるので何とも言えないところだが、客車や貨車は牽引機関車を兼用することもできるので、コスト削減にもなる。最新型にこだわらなければ旧製品を中古で安く手に入れることも可能なので、お好みで少しずつ買い足していくのも良いのではないかと思う。実運用との整合性にこだわるとキリがないところではあるが、機関車は汎用性が高いものを選べば違和感は少ない。例えば具体的な形式で言えば、交直両用のEF81や非電化区間の代表格とも言えるDD51等はどの編成を牽引してもそれなりに合う。
 少し話題がずれるが、見た目の精密さにそれほどこだわらず、上り勾配あり(直線で4%程度まで)のレイアウトで長編成をしっかり牽引したいということであれば、TOMIX製の旧製品(ほぼ品番2xxxとなっているもの)でF級クラスの機関車を推奨する。大事に保管されていた綺麗な商品が中古市場で安価に手に入るし、構造が現行製品よりもシンプルなので分解してメンテナンスするのも楽にできる。力学的な根拠はさておき、トラクションがしっかりかかるようでパワー不足でスリップしてしまうということはほぼない。寝台特急のフル編成15両程度であれば普通に上る(実証済み)。

3. 通常の電車の編成について

 いわゆる普通の電車編成をカスタマイズしたいのだということであれば、アーノルドカプラーが装備されている製品を選んで編成を組むのがいちばん手っ取り早い。ただし、先に述べたようにメーカーにもよるが現行品では少なくなってきているので、中古の旧製品から探した方が種類は多いと思われる。
 慣れてくると本格改造の世界にようこそということになり、カプラー交換と場合によっては車両本体の加工に心血を注ぐことになる。ただし、原則としてこれが正解というやり方は存在しない。ネットの記事や動画は参考にはなるものの、メーカーや対象車両は当然ながら限られており、自身で試行錯誤することが求められる。筆者自身も本稿で網羅的に語れるほどの材料は持ち合わせていない(数編成は手を出してみたが)ので、本稿では割愛する。