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投稿日:2021/06/09

鉄道模型のススメ – 製品購入編

「初心者向け導入編」に続き、ここでは実際に製品を購入する場合のポイントを緩く紹介していく。別に鉄道模型に限ったことではないが、一昔前に比べれば一部の特殊な商品を除き、流通が複雑になっていることは「初心者向け導入編」でも少し触れた。やや繰り返しになってしまうが、製品を購入するという行動スタンスは人によって様々なので、極論としてはお好きな形でどうぞということにはなる。
本稿は著者自身の経験を踏まえた上での主観的な内容であり、あくまで参考として受け止めてほしい。また、表現が煩雑にならないようにするための都合上、カタログ入手済みを前提として記述する。

1. 新品購入のケース

昨今のリユースケースと同様、鉄道模型にも新品と中古品があり、どちらも販売されている。まずは新品購入について触れる。
購入方法はシンプルで、大きくは直接ショップに出向いて店頭販売を利用するかネットショップを利用するかの二択となる。これは他の物品を買うときと特に変わらない。ただし、例えば家電等と比較すると店頭販売について次の点が異なっている(と筆者は感じる)。

  • 製品の実物をケース越しに「見る」ことはできるが触れることはできない。
  • 店舗数の絶対数は少ない。
  • 専門店の場合は特に店員が製品についての質問に丁寧に対応してくれる(あるいは詳しい人に代わってもらえる)。
  • カタログに書かれている品番を指定すれば、類似製品等の購入誤りはほぼ起こらない。
  • ネット販売では品切れになっている在庫製品が見つかる場合もある。
  • 余計な営業行為は行われないので、ゆっくりと製品を見回すことができる。
  • その日限り、現品限りの特価等のセールは全くない。
  • 在庫希少であればディスプレイモデルをそのまま購入(特価なし)ということも珍しくない。

価格面では大抵の商品同様にネットショップの方が有利だと言わざるを得ない。店頭での特価セールのようなものが存在しない以上、シンプルに店舗数の差で決まってくる。今時実店舗のみで営業している店は少なく、当然ながらネット販売も行っている。そこに実店舗なしのショップも加わるのだからあとは市場の原理に従うこととなる。

入門セットのネット販売サンプル

もし実店舗に行く機会があれば、特に初めての場合はレンタルレイアウトも併設しているところを推奨する。
実際の走行シーンを見学できる(見るだけなら無料)し、多少の課金をしても良いということであれば車両もレンタル可能なので、実際に車両配置を行い、制御機器を操作して運転まで一通りを体験できる。その体験自体が購入に関する大きな情報源となることは言うまでもない。

2. 中古品購入のケース

中古品に関しては、新品と比べると流通経路や販売形態が多様化しておりやや複雑である。実店舗で購入かネット経由かという点では新品と変わらないのだが、市場に関してはフリマやオークション出品が加わり、製品に関しては無改造品、改造品、ばら売り、セット売り、部品売り、ジャンク品等大げさに言えば何でもありの世界なのだ。良い買い物ができるかどうかは経験や目利きに依存する部分があるし、見た目で判断できないことが多い以上、運に左右されることもある。
著者が考える中古品購入のメリットは以下の通りである。

  • 新品ではそれなりに高価な製品を安く買えることが多い。
  • 状態が良いものは新品とほとんど変わらない。
  • 品切れになってしまった製品を購入できる機会がある。
  • 旧製品、いわゆる型落ちをかなり安価に入手できる。
  • いわゆる「外れ」を引いた場合はメンテナンスを自分で行う必要があるので必然的にそのスキルが上がる。
  • 実際のところ前述の「外れ」はそれほどなく、大抵の場合は製品状態の評価や出品者自体の評価がきちんと情報開示されているので、それらを吟味すれば十分に良い買い物ができる。

実のところ、筆者は最初中古品を敬遠していた(製品保証など当然なしなのでリスクを回避していた)のだが、旧製品の編成増結を試みるのに中古品を探すしかなかった。運よく見つかったのでおっかなびっくりで購入してみたところ、これまるっきり新品じゃないのか?というくらい品質良好のものが届いたのだ。以降、新品にそれなりの金額をかけるのがもったいなく感じられるようになり、現在ではまず中古品から目的の製品を探すようにしている。実際、最近購入した製品のほとんどは中古品である。
「初心者向け導入編」では最初の一品は新品を勧めたが、ほぼ気持ちの問題と考えてもらって良い。状態の良い中古品であれば、新品同様であることがほとんどなので、少し慣れて安価に手に入るなら中古品を推奨する。
ただし、明らかに不当と思われる程高く値付けをしているケースもあるので、カタログの定価も見ながら割引率が妥当かどうかはよく吟味することが重要である。場合によっては普通に新品を買った方が安いケースもよくあるということを付け加えておく。もっとも、いわゆるレアものの人気商品については新品だろうが中古品だろうが定価をはるかに上回る価格で販売されていたりするのだが、それは鉄道模型に限った話ではないだろう。

3. 製品販売の特徴

かなり個人的な見解ではあるが、鉄道模型製品はいわゆる車両群とそれ以外の全てに大別される。車両が主役的存在で種類も豊富ということだけでなく「購入」という視点からすると具体的に以下のような違いがあるからだ。

車両群

  • 同一品番の製品は、一定数のロットしか製造されない。つまり、売り切れたら原則としてお目当て品番の新品を購入する機会はない。
  • 前述と関連するが、リニューアルや新商品販売が原則として「毎月」行われる。
  • 結果として膨大な品番履歴が残ることになり、それら全体を把握するのは至難の業である。
  • カタログは年一回のペースでリニューアルされるため、毎年購入して保存しておいた方が良い。メーカー公式サイトからは販売終了商品の情報はどんどん削除されるため、カタログだけが貴重な製品仕様の手がかりとなる。
  • おそらくマーケティングの判断なのだろうが、同一品番が「再販」されるケースもある。
  • この車両形式が欲しいといった場合、「以前」は発売されていたというパターンは日常茶飯事であり、新品にこだわらないのであれば中古市場を探すと良い。
  • 新商品は大抵の場合、外観・内装のディティールや走行性能等の品質が向上していくため、車両形式に関わらず定価自体はどのメーカーも上昇傾向にある。
  • いわゆるコレクター要素が満載のため、欲しい商品が発売されると出費に歯止めがきかなくなる恐れがある。

その他

  • リニューアルサイクルは長く、新商品も年に数えられる程度である。
  • 同一品番については後継品が発売されない限りは安定的な供給が行われており、すぐに売り切れということはない。
  • 一時的に品切れということはあるが、大抵の場合それほど期間を置かずに再販される。
  • 車両と比較するといわゆるコレクター的な要素が少なく、レイアウト拡張等が終わると頭打ちになる。そのためいつまでも出費がかさむということはない。もちろんレイアウト拡張や作り変えに凝りだすとその限りではないが・・・。
  • 車両ほど単価は高くなく、中古品を買うメリットは相対的に少ない。割引率の高い新品を買った方が安い場合も珍しくない。
  • 目的の商品が中古品市場に出回ってないことも多い。

このように、こだわり次第ではあるが車両群については、日頃からの情報収集が欠かせないことが分かる。どうしても欲しい発売予定の新商品情報を得た場合は、速やかに新品購入の予約を行うすることを推奨する。メーカーから発売予定の情報が出た場合は、かなり早くから受け付けており、特にネット予約の場合は割引率が高く設定されていることが多い。
そのうち中古市場に出回りそうなので待つという判断もあるのだが、人気商品になった場合は中古でも全く値が下がらないばかりか、定価より上がってしまうこともしばしばある。そして厄介なことに人気商品なのかどうかを読むのは非常に難しいのだ。慣れてくるとなんとなくこういう傾向がありそうだという程度は分かるのだが、パターンはほとんどなきに等しく、かなりカンが利かないと簡単に予想が外れる。
不条理に感じられるかもしれないが車両に関しては、カタログ初登場の製品が、既に新品販売終了となっているケースなど珍しくないのである。

4. 最後に

昨今の購入事情を踏まえてざっと思うところを書いてみた。懐事情はもちろん人それぞれであるが、精密機械類が多いため、単価としては一般的には高価な部類に入るだろう。
いずれにしてもNゲージャー諸氏には是非後悔のない買い物をしてほしいと思うし、本稿がその手助けになれば幸いである。