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投稿日:2021/05/26

鉄道模型のススメ – 初心者向け導入編

こんなご時世なので、家で楽しめるインドア趣味として鉄道模型を取り上げる。
鉄道模型は原則として、レール幅(軌間、ゲージ)に依存して世界標準で規格が決まっている。
そのため、縮尺も含めると完全同一ではないものの、規格が一致していれば海外製品と国内製品を組み合わせることも可能である。
※ ただし、車両長の都合からカーブ半径の最小値がある等、一定の制約条件は存在する。
本稿では国内で最も普及しているNゲージについて、著者の経験を元に初心者向けの導入パターンを緩く紹介していく。
なお、趣味全般に言えることだが、極論としては好きなように始めて楽しめば良いということにはなる。
Nゲージを趣味としている、もしくはしようとしている方々(以下、Nゲージャーと呼ぶ。)にはそれぞれ様々な背景が存在するので、あくまで参考として受け止めてほしい。

(1) 総合カタログを入手する

Nゲージを製造・販売しているメーカーとして国内には二大ブランドが存在する。
ググればすぐに出てくるが、「TOMIX」と「KATO」である。
少なくとも自分がNゲージを始めたころ(40年近く前)からこの状況は変わっていない。
両ブランド共に車両、レール、制御機器、ストラクチャー類等を一通りラインナップしている。
これらが総合カタログには綺麗にまとめられている。
もちろん公式サイトもあるが、カタログの方が断然見やすい。
カタログ自体もそれなりの価格で販売されている(この段階で既に鉄道模型が決して安い買い物で済まないイメージがわく)のも納得できる。
とりあえず始めるにはこの二社の製品から必要なものを選択して購入することで事足りるし、流通量も多く入手もしやすいはずだ。
費用感やサイズ感の参考にするためにも、いきなり製品を購入するのではなくまずはこの二社のカタログを入手すると良い。
始めていくにあたって間違いなく有用な情報が得られるはずである。

(2) 室内でどのようにレール配置するかを大まかに決める

鉄道模型の世界では、レール配置(駅等のストラクチャーも含む)のことを「レイアウト」と呼ぶ。
部屋やオフィスに家具や什器をどう配置するかについても同じ言葉を使うので違和感はないかと思う。
昔も今もNゲージャーを悩ます筆頭がこのレイアウト問題だ。
日本の住宅事情から考えると、広大な部屋を自分の自由に使えるという事例は少数派であろう。
そのため、限られた空間をなんとか確保するというのは重要事項なのだ。
カタログにはレール寸法がしっかり載っているので、使用できる室内空間と照らし合わせてどんなレイアウトが可能かあらかじめ検討しておく。

(3) レイアウトベースを用意する

「ねー、購入の話まだー?」という声がきこえてきそうだが、可能な限り事前準備はしておいた方が良い。
金銭感覚にもよるが、鉄道模型はあまり安い買い物ではないので、購入後に「失敗した」というのはできるだけ避けたい。
(まあ、だいだい失敗もするけど。。。)
さて、この部屋のここでレール配置するというのが決まった場合、典型的なのは購入してそのままレールを床敷きにするパターンだ。
段差さえなければ平らで安定しており、直接床にレール配置するのは手軽なので著者も最初はそうやって遊んでいた。
しかし、リアルな走行シーンを見たい場合は、目線を床まで落とさないといけないので横顔を床にペタンコする羽目になる。
また、不注意で車両を踏んだり蹴ったりして破損してしまうリスクがある。
そのため、レール配置は机やテーブルの上など、ある程度の高さがあるところに行うのが望ましい。
ただし、ベーシックなレイアウトプランでも大抵は長さがオーバーしてしまう。
そこで前述の机やテーブルを「台」としてその上にレイアウトベースとなる素材を乗せると良い。
著者の推奨は厚さ5cm程度のスタイロフォームである。
断熱材で使われる素材だが、ホームセンター等で安価に購入でき、軽量で強度もある。
ベーシックなレイアウトを展開するには十分な大きさがあり、カッターで容易に切断もできるので大きさを調整することも可能だ。
使わないときはどこかに立てかけたり、倉庫に収納することもできるので、置き場所に困るということもあまりないと思われる。

(4) レール、制御機器を選択する

ここからやっと購入の話題に移る。
車両については後述するが、まずはレールと制御機器をどうするか。
おさらいになるが製品購入の候補として「TOMIX」「KATO」の二大ブランドがあることは前述の通りである。
必然的に悩ましいのはどちらを選ぶのかということになる。
残念ながらレール接続に互換性はなく、配線関連や制御機器もメーカーの独自仕様だ。
※ 厳密には特殊レールや改造を用いることによって相互接続可能ではあるが、最初から敢えてややこしいことをする必要はないだろう。
そのためどちらかに統一することになる。
ではどちらが良いのか?
著者の結論は「好みで選べば良い」である。
Nゲージャー諸氏の中にはTOMIX派、KATO派とでもいうかどちらかを酷評したりする人もいるようだが、著者から見れば解なしの論争のようなものだ。
どちらにもメリットやデメリットがあり、ググればたくさん情報が出てくる。
なお、スピードコントロールや電源供給を行うメインの制御装置を通称パワーユニットもしくはパワーパックと呼ぶ。
これに関しては近年ではTOMIX、KATOのどちらにも対応したショップオリジナル仕様の製品も誕生している。
著者はTOMIXを使用しているが、これは子供の頃(40年近く前)にプレゼントされた製品がたまたまTOMIXだったからである。
TOMIXを使っていて特に不具合や不満はなかったので、そのまま現在も愛用している。
なお、TOMIXの現在のレールはファイントラックと呼ばれる製品群となっているが、TOMIX同士であれば旧製品とも互換性がある。
実際にファイントラックと旧レールを接続しているが、通電不良その他の不具合は起きていない。
(旧レールは何年もほったらかしにしていた時期があり、錆びかけていたがクリーナー等の研磨メンテナンスにより復活した。)

(5) レール、制御機器セットを購入する

どちらのメーカーもレールセットや、レールと制御機器を合わせたセットを販売している。
事前検討したレイアウトに当てはまるようであれば、最初はセットで買うのが手軽である。
Amazon等のネット通販で特価で売っていたりもするので、調べながらなるべく安価に手に入れよう。
車両も含めたオールインワンのセットも存在するのだが、管理の都合上車両は分けて購入した方が良い。
理由については後述する。

(6) 車両を購入する

車両についてはレール、制御機器とは異なり、どのメーカーの製品を購入するかには自由度がある。
序盤で述べた通り、レール幅は規格で決められているため同じNゲージであれば「KATOのレール上をTOMIXの車両が走る」
逆に「TOMIXのレール上をKATOの車両が走る」というのは全く問題ない。
さらに連結器部品を合わせれば両メーカー混在編成も不自然なく可能だ。
ちなみに著者はどちらの車両も保有しているが、車両保有数はKATOの方が多い。
ただし、ラインナップは異なるので、欲しい車両形式がどちらかのメーカーにしかないというケースはあり得る。
具体的にどの車両をどのメーカーで購入すれば良いかについてはまさに「好みで選べば良い」である。
車両は製品群の中でも当然ながら中心的な存在であり、購入者のこだわりが最も出るところであろう。
単価も高いので予算との兼ね合いで購入を検討すると良い。
ネットなどない昔の時代は、どこの店舗で買っても割引なしの定価で販売されていることがほとんどだった。
しかし、今はネット、店舗、新品、中古と流通が複雑化しており、定価はあくまで参考価格となっている。
どういうルートで買うかは迷うところだが、最初に手に入れる製品は記憶に残るものなので、きちんと保証のついた新品購入を推奨する。

(7) 車両のみを別購入にする理由

前述(5)で車両は分けて購入した方が良いと書いた理由だが、いちばんは車両ケースが別になるという利点だ。
例えば趣味が進んで、レンタルレイアウトに車両を持ち込んだり、固定レイアウト(分かりやすく言うとジオラマ)化でセットのレールを使ったりするケースが出てくる。
その際、オールインワンの場合はいつも大型の箱に車両が格納されていることはデメリットにしかならない。
これは著者の失敗談だが、子供の頃に1回だけオールインワンタイプを買ってもらったことがある。
自分の好きな車両と欲しかったレールやストラクチャーが全部入っていて魅力的だった。
しかし、趣味が進んで結局レールや制御機器は全て固定レイアウトの一部として組み込んでしまった。
大きな箱には車両だけが残り、いちいち開封して取り出すのが面倒だったため、結局車両だけはケースなしの状態で外に出してしまったのだ。
室内とは言え、ケースなしでNゲージ車両を放置すると寿命を大幅に縮める。
塗装はだんだんと剥がれ、窓枠の部品は外れ、車輪には錆が発生し、動力車もボロボロ、結局廃車にするしかなかった。
(とはいえ使える部品もあって後年にバラして使っているが。。。)
余談ではあるが、自分が子供の頃に初めて買ってもらった小型のディーゼル機関車は普通にケース保管をしていた。
そのため、部品自体はどこも破損しておらず清掃メンテナンスにより現役復帰を果たしている。

(8) おすすめレイアウト形状と始め方

オーソドックスな長円(小判型、オーバルと呼んだりもする)をベースに(2)で検討したスペース事情に合わせてカーブ半径や直線区間長を決めると良い。
スペースが思うように取れない場合、セットではレールが余るかもしれないが、きっとそのうち活躍する時が来る。
まずはレール接続、基本配線、レールへの車両配置、走行の操作方法に慣れて、鉄道模型の魅力を存分に味わってみてほしい。